Freedom~氷点下の宴Ⅰ~

みんな忘年会って知ってるよな?
「忘年」って言い訳を付けて
一杯500円もするような生ビールを
9杯も10杯も飲みまくるあのお祭りだ
今日は12月30日。
世間は忘年会シーズンの真っただ中
そんな中俺らは栃木県の最北部
那須町にある黒磯駅のロータリーにいた
北風がビュービュー吹いており
寒さのせいか周りに人は1人もいない
AM7:00俺らは昨晩の雪がまだ残る
駅前の住宅街を歩いて進んでいった

話はさかのぼり2週間ほど前
俺は高校で、夏に一緒に旅した
たくま(仮名)と二人で話していた
あの旅から5か月。季節が変わり
街の平均気温が30度以上変わっても
俺らの関係はちっとも変ってなかった
朝はいつも同じ電車(違う車両)
改札で挨拶だけして別れたと思ったら
たくまがチャリに乗って徒歩通学の
俺を追いかけてくる。
仲が良いのか悪いのかよく分からん
少なくとも俺はたくまといて
退屈はしていなかった。


ある日俺はYouTubeアメリカ横断した人の
動画を見ていた。かっこいいな羨ましいなと
思いつつも何故か心の中で「俺もやってやる」と
反骨心みたいのが芽生えていた。
まぁ俺らの鬼バイトではアメリカ横断のために
30日も休みが取れるわけがない
そこでまずは俺らの住んでいる栃木県を
北から南まで歩いて縦断してみたいなと思った
なぜ徒歩旅なのかって?
う~ん明確な答えがあるわけでもないんだけど
最近ってチャリ旅とか
バイク旅とか流行ってるじゃん
それらを否定するわけではないが
俺は徒歩旅じゃないと
見つけられない物ってあると思うんだ。
草むらに隠れているエロ本、
裏路地から聞こえる子供の笑い声、
犬のうんこと(⁉)
潰れかけの商店
全部日常にあり溢れている何気ないこと
だけどそんな何気ないことこそ
意外と思い出に残ったりするもんだろ
これを読んでるあんたにもそんな経験あるはずだ
俺は何気ないこと探しが大好きだ
だからチャリじゃなくて
徒歩でチャレンジしてみたい
「何の収益性もないけど  
   徒歩で氷点下の栃木県を歩いて縦断」
きっと俺の先祖は
とんでもないドMだったんだろうな

高校でたくまと話している場面に戻ろう
今回の旅もたくまと一緒に行こうと考えていた
実行予定日は12月30.31日の一泊二日
このことをたくまに話すと
意外とすんなりと了承してきた
時期も時期だから2人だけの
忘年会ということにした
まぁ俺らの忘年会はそこらの忘年会とは
訳が違う。豪華なご飯も飲み放題の
ソフトドリンクもどこにもない
ちなみに今回の旅の俺の所持金は
視聴者投票で0円になってしまった。
(宿代は除く)
みんなはこれがどれだけやばいかってこと
分かってくれるよな?
とりあえず2日間飯が食えない
ってことだよね
食べることが生きがいの
俺にはとてもきつい
んまぁ2日飯食わなくても
死ぬわけじゃないし
それに、歩いて栃木縦断なんて
大人になったら絶対やんないし
今やるしかないでしょ
2人とも前日まで何の準備もせずに
適当に着替えだけをバッグに詰め込んで
当日を迎えることになった

ここで冒頭の場面に繋がる
俺とたくまは誰もいないロータリーに
立ち尽くしていた。たくまが言った
「やべぇ本当に来ちまったよ、、」
カラスの鳴き声が早朝の黒磯の街に
響き渡る。黙ってるとこの街に
飲み込まれてしまいそうだ
「とりあえず歩こうぜ」
そう言って俺らは国道に向かって
歩き出した。スマホのコンパスで
方角だけ調べてあとはその方角に
歩いていくだけ。宿に行くまでに
スマホの充電が切れたら大変だ
無駄なところで
電池を使うわけにはいかない。

歩き出して20分
国道が見えてきた。一安心
今日はここから宇都宮の中心街まで
歩く予定だ。ざっと60㎞程か。
AM8:00俺らの長い長い忘年会が始まった
朝陽が雪に反射し眩しい
俺らは、いや俺はこの非日常な状況に
少しウキウキしていた。
決められていないルート
所持金が0円ということ
膨大な自由時間
この旅を面白くするのは俺たちだ
無一文だから何も出来ないと
考えてしまうのはナンセンス
いや逆に無一文の方が旅って
面白くなったりするんだよね
俺らは便利な世の中に生まれすぎた
偶にはこんな縛りがある環境で
生活するのも楽しいかもしれない
自分の知恵と感覚を信じて
栃木最南端の街を目指そうか
時間はまだまだたっぷりある。

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Freedom~ちっぽけな冒険隊Ⅴ~

さてさてこの旅の物語も今回が最終話だ。
今俺は宇都宮のとあるカフェで
この文章を書いている。
最近は暗くなるのが早くてとても困っている。
は、どうせ季節のあいさつとか思ってるだろ。
違うそんな甘いものじゃない。
本当に困っているのだ。
可愛い子の表情がはっきり見えなくて、、
インフルは流行するし唇は乾燥するし、、
早く温かい春がやってくるのを
俺は待ってるよ。あぁさみぃ、、、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最悪だ、銭湯を出てすぐなのに大雨に見舞われた
風呂入ったばっかなのによ~
めっちゃダッシュして近くのスーパーに駆け込んだ
そこで昼ご飯用に食パン一斤を購入
(もちろん値引きシール付き)
そこから近くのバス停に行って
土浦駅行きのバスに乗った

バスを降りて駅前の商業施設に駆け込む
地下1Fのダイソーでヒッチボードが濡れないように
ゴミ袋を買った。レジに並んでた時の話だ
でかいバックパックを背負って
段ボールを抱えている俺を
店員さんがすごい不思議そうに見ていた
ちょっと気まずかったので話しかけてみた
「僕、今からヒッチハイク
   宇都宮まで帰るんですよ」
もちろん特上のにっこりスマイルを添えてね
店員さんは目を丸くして驚いていた
なんていったって外は大雨だからね
ダイソーを出て多目的トイレで
ヒッチボードを書いた
つくば市まで乗せてください」
相変わらず汚い字だ。まぁ大目に見てやってくれ
Twitterに写真を投稿してからカッパを着て
ゴミ袋にバックパックを詰めて出発した
方角だけを信じて進んでいくとヒッチに最適な
スポットを見つけた。道路に面したコンビニの前。
俺はすぐにヒッチを始めた。
しかし交通量が少なくなかなか停まってくれない
そんな時だった。一台の軽自動車が停まった
「狭いけど筑波まで乗ってけよ」
俺は無我夢中で走り寄った。
その時車の中には大人二人と子供二人が乗っていた
僕は助手席に乗せてもらえることになった
だがここであることに気づく。先ほどまで
助手席にはこの男性の息子が乗っていたのだ
「息子さんはどこ行かれたんですか?」
すると「気づかなかったか?後部座席の足元で
ダンゴムシみたいに丸くなっているじゃないか」
これには俺も驚いた。たしかに乗せてもらえたのは
めっちゃ嬉しいがさすがに申し訳ない
すると息子が言った。
「僕がお父さんにお願いして乗せてもらったんだ」
俺は感動。こんな交通費をケチった高校生のために
自分を犠牲にしてまで席を空けてくれるなんて
それもこの息子はまだ小学6年生だ。
日本の将来も安心
さて俺は乗せてくれた家族と
話しながら筑波まで向かった
聞くとこの家族は土浦に戻ろうとしたところ
俺を見つけてわざわざ筑波までUターンしたらしい
心が広いにもほどがある。
何かで恩返ししたいなと思いバックの中を探した
車は筑波の巨大ショッピングセンターに着いた
北関東で一番でかいらしい。
「ここならすぐに乗せてもらえるから」と
優しい心遣い。お別れはめっちゃ寂しかった
息子にマスカットキャンディーを一袋プレゼントし
両親にお礼を言って別れた。
こうして初ヒッチハイクは大成功に終わった。
俺はショッピングセンターで
スマホを充電しながら水を購入し30分休憩した
外にでると青空が広がっていた。
さて早く栃木に帰るとしますか
ヒッチ再開
今度は結城市を目指すことにしよう
ヒッチ開始30分経過。みんな笑ってくれるけど
一向に乗せてくれる気配がない
これはまずい。その時老人が歩み寄ってきた
「お兄さんや、こっちは結城と反対方向じゃよ」
「ま、まじぃ⁉親切にありがとうございます(泣)」
30分の努力は水の泡になってしまった

 

反対方向の出口に行ってみた。全然車が来ない
もう諦めて結城の方向に歩きながらヒッチした
向かい風の中歩きながら対向車線の車にも
見えるように腕を伸ばし段ボールを掲げる
歩き出して20分。1人のお姉さんが寄ってきた
「お兄さんもしよければ乗っていきません?
 子供もいて騒がしいですけど、もし良ければ」
「お願いします。せめてこのバックだけでも」
「いやバックだけ乗せてどうすんのwほら来て」
あぁ神様。1時間粘ったご褒美をありがとう
今回は若いご夫婦と子供と妻のお母さんが乗った
5人乗りの車に乗せてもらった。
鼻の中に社内の香水の匂いが漂う
そのまま1時間近く家族と話しながら下道を進んだ
車は栃木県の野木町に入った。
ご夫婦は野木に住んでるらしい
4号線沿いのコンビニに降ろしてもらった
さぁいよいよ宇都宮まであと少しだ
とりあえず近くのスーパーまで歩き段ボールを調達
段ボールが無料で貰えるのは当たり前なのに
旅の時はやたらと段ボールにありがたみを感じる
そのままマクドナルドに入り
トイレで段ボールを解体。ヒッチボードを書いて
また国道に歩いて行った。
これがこの旅最後のヒッチだろう
今回は早く乗せてもらいたい。
昨日のサイクリングのこともあり、
体はもうヘトヘトだ
交通量が極端に少ない野木の国道でヒッチスタート
ヒッチしながら動画を撮影していて
思ったことがある。ヒッチハイクの動画って
意外と撮影が難しいのだ特に一人旅の場合はな。
ほかの動画の撮影と違って
見どころ=乗せてもらえた時だけだから
ここを撮り逃すと
さっぱり面白くない動画になってしまう
そして皮肉なことに撮影を止めてすぐに
乗せてくれる車が現れるのだ。
今回のヒッチもそんな感じ
ヒッチ開始15分で大きな車が近くに停まった。
運転手の顔は見えないが走り寄ってみる
すると40代くらいのダンディーなおっさんが
「停まってると迷惑だからとりあえず乗れ」
乗り込むとおっさんは言った
「宇都宮でいいんだな。
よし分かった連れてってやる」
世の中こんな単純に優しい人がいるんだな
聞くとこのおっさんは
まさかの市議会議員だったのだ
あえて名前は出さないけどね
車は宇都宮に入った。
「ほんとにありがとうございました!
 この辺に降ろしていただければ大丈夫です」
「兄ちゃん地元はどこだ?」
「宇都宮よりも北の〇ってところです」
「今から電車に乗って帰るのも疲れるだろ
兄ちゃん面白いから最後まで連れてってやるわ」
もうすごすぎて何がなんだか俺には分からん
途中でコンビニに寄ったときも
「喉カラカラじゃないのか?ほら好きなの買え」
これが男ってもんだよなぁ。かっこいいや
このおっさんも大分頭がぶっ飛んだ人だった
函館の夜景を見るために
函館山の斜面を車で登っていったり
早く家から出たいからって
自衛隊系列の高校に入学
そして自衛官になっちゃったという波乱のおっさん
この人と話してると少しも飽きることがなかった
車が家の近くのコンビニに着いた。
議員お約束の名刺をいただき
ガッチリと握手を交わした
いつかまたどこかで会えるといいななんて
考えながら夕焼けに染まる俺の街を歩いていった

やっぱ旅っていいよな
色んな人に会えるし自分の隠れた感性が全開になる
さて、また旅に行きたくなってきたな
次のお話も楽しみにしていてくれ

Freedom~ちっぽけな冒険隊Ⅳ~

昔の旅を思い出しながら
こうやって文章書いてると知らない間に
結構長くなってたりするもんだよな
今は国語の授業中だ。
どうせ今日はテスト返し。授業聞く気全くなし
もう少し好きに書かせてくれ

 

さてさてPM8:30、
俺らは土浦の街の中心部に帰ってきていた
まぁ中心部といっても特に何もないんだけどね。
駅でもらった周辺地図を広げてみたんだけど
近くにスーパーはなさそうだ。
てことで昼に続きまたセブンにお世話になろう
俺がかごに入れたのはバナナ、レトルトカレー
食パン千切りキャベツ、天然水2L。
貧乏高校生は贅沢ができない

そのセブンから歩いて
20分ほどのところにキャンプ場はあった
チェックイン時間はとっくに過ぎていたので
翌朝代金を払うことにした。
もちろん電話はしてあるよ
Amazonの安物テントを友達と建ててたら
おっちゃんが手伝ってくれた
おかげで10分もかからず建てることができた
最後におっちゃんが心配そうに言ってたよ
「このテントに2人寝れるかな??」
安心してくれ、意地でも寝てみせる
さすがに空腹の限界、
お待ちかねの夕飯にしようか
さて問題だ。
さっき買った食材を思い出してくれ
あの食材を使って
俺はどんな夕飯を作ったと思う?
レッツシンキングタイム
3.2.1はい終了
答えはこうだ。
まずバナナを歯でかじる。
その次にそのバナナを食パンに挟む。
そしてその上からカレーをかけて
バナナカレーパンの完成
次にサラダだ。これは超簡単
まず千切りキャベツの袋を開けよう。
そしてカレーを流し込む。
はいカレーキャベツの完成
要するに
カレーさえあればなんとかなるってこと
うん、将来は料理が得意な人と結婚しよう

そろそろ寝ようかと思ってたPM9:30
なんだか外が騒がしい。
大人数の笑い声がする
若干不機嫌になりながら外に出た
そしたら子供会か何かの集まりが
キャンプファイアーを囲み
ダンスしながら踊っているのだ
「これは長い夜になりそうだ、、、」

10分後誰かが俺らのテントを叩いた
「お~い誰かいますかぁ」
さっきの子供たちだ。
「このテント小さいですねぇ」
正直くそ腹立ったが優しい声で言ってやった
「こらぁ食べちゃうぞ!!」
そしたらこれが逆効果。
ツボにはまってしまったらしく
それから20分攻撃は続いた
「友達よホントにすまない」
PM10:00
ボディーシートで体を拭いて寝た
風呂は明日の朝だ。近くの銭湯に行こう
おやすみ、今日もいい日だった

 


なかなか寝れない。テントの中が暑すぎる
まるでジャングルだ
きっと夜になっても下がらない外の気温と
1.5人用のテントに寝てる
2匹の野獣のせいだろう
5分、10分、30分、60分、、、
ついに時刻は夜11時になってしまった
「なぁ暑いし外いかね??」
「同感、俺もそう思ってた」
2人はテントから抜け出して港へ歩いた
あれほどうるさかった子供たちも
もう全員寝静まり返っていた
聞こえてくるのは
遠くから聞こえる波の音と鈴虫の大合唱
歩いて3分で港に着いた
そこには昔使われていたたくさんの船が
無造作に積み重なっていて
偶に風が吹くとギシギシ音を立てていた
ちょっと怖い。
二人は黙ってコンクリートの地面に座り
ただ暗い夜の湖を眺めていた
灯台があるので少し明るい
何分か経ってどちらかが口を開いた
学校のこと、将来のこと、好きな女の子のこと
俺らは時間を忘れて喋り続けた
これまでで最も深い時間
16歳の俺らには
将来日本がどうなるかなんて
全然分かんない
もしかしたら急激に景気が悪くなるかもしれない
逆にバブルがまた起こるかもしれない
どんな時代になっても俺らは俺ららしく
生きていこうぜみたいな話をしてた気がする
今思えば臭すぎる話だよな
まぁ体も洗わずに
きついテントで寝ようとする馬鹿者には
これくらい臭いセリフもお似合いかもしれないな

 

何時間経っただろうか。灯台の灯りが消えた
外の気温も下がってきた
俺らもやっと寝れそうな気がする
テントに戻ってすぐに爆睡した
鈴虫の大合唱は12時を過ぎても
鳴りやむことはなかった

 

おはよう、テントの中が明るい
外に出ると昨日の子供の笑い声
カモメの鳴き声
ラジオ体操の愉快な音楽
すぐ隣にこいつが寝てるってことを除けば
これ以上ない最高の朝だ
近くのコンビニで朝飯を買って港で食べた

 

あ、言い忘れていたが今日の帰り道は
宇都宮まで初ヒッチハイク
電車代もったいないからね
友達のことを起こしたのだが
なんだが機嫌が悪い
放っておこう
ヒッチのルートを決めるために
周辺の街について聞いておくことにしよう
丁度いいところに昨日の小学生がいた
「なぁ筑西市ってどんなとこ??」
「・・・・・・・・」
無視された。きっと風呂に入ってないからだ
自分でも気づいてる。俺らくせぇ

 

テントをたたんで銭湯に行った
行く途中でヒッチについて話したんだけどさ
またケンカしたんだよね
友「お前、今日のヒッチについて調べた」
俺「あったりまえだろ。昨日の夜1時まで
寝ないで調べ続けたわ。とりま国道にいこう」
友「その道の交通量は?
宇都宮に行く車の割合は??」
俺「おいおい俺は交通量調査のバイトじゃないんだ
そんなの知るかよ、ネットにも載ってない」
友「載ってないわけない。もう一回調べろ」
俺「いや、仮にデータがあってもさ
ヒッチの役には立たねえよ。大事なのは気合」
友「んじゃ俺はヒッチしないから電車で帰る」
全くこれだから金に余裕あるやつは、、、

 

銭湯のお湯は日焼けした肌には熱すぎた。
銭湯の中でおっちゃんに道を聞いたが
頭がボケ過ぎて何言ってるのか分からん
もうデータなんていらん
自力でやってやるよ

 

10分後俺は銭湯をでた、友達を置いて
さぁ帰ろう俺の街に
歩き出した俺の右手に雨粒が落ちてきたのに
まだ気づいていなかった

Freedom~ちっぽけな冒険隊Ⅲ~

さてと、どこまで話したんだっけかな。
ゴール直前に2人で大喧嘩したとこだっけ?
あ、間違った。これはまだ話してなかったな。
すまない今の話は忘れてくれ

昼飯を食い終わって
猛暑の中のサイクリングは再開した。
みんなはあの田んぼに引っかかってるCD分かるよな?
このCDが厄介なのだ。
想像してみてほしい。
ギラギラした太陽の光がCDに反射し
その光が自分の目に突き刺さってくる場面を。
サイクリングする人が
サングラスを付ける意味がやっと分かったよ
少し進むと砂浜が見えてきた。
海水浴もできそうなきれいなビーチだが
湖の真ん中ということもあり
遊んでる人は一人もいなかった。
俺たちは自転車を降りてビーチに駆け出した。
ゴミが多くて汚い茨城県の某海水浴場と違って
ゴミは一つも落ちていない。
広い霞ケ浦湖の向こう岸には
俺たちがスタートした
土浦の町の高層ビルが見えた。
そろそろ半分か
さすがにこんなに暑いと
湖の水もお湯に変わっている PM2:00
その後俺たちは向かい風の中
全長250mくらいある大きな橋を渡り、
道路工事中の砂利道を
がったんがったんしながら通り抜け
久しぶりに県道にでてコンビニで休憩した。
さすがに朝早かったこともあり
しんどくなってきた。15歳も楽じゃない
すかさず疲れた体に水分補給。
体に入ってきたのは、
キンキンに冷えた天然水ではなく
熱々になった天然水だった。
「プール入りてぇ」
俺の独り言は広い湖の中に消えた。
ここからは道の駅行方ってとこまで
永遠にまっすぐな道が続く。
2人で相談して道の駅までは
途中休憩を一回挟むとき以外は
自分たちのペースでいくことにした
友達はロードバイクなので
あっという間に見えなくなってしまった。
俺もロードバイクに負けじと走るが
なんせママチャリなので全然追いつかない 笑

 

途方に暮れながらチャリを漕いでると
防波堤で釣りをしている親子を何組か見かけた
一組の親子は遠方から遊びに来ているのだろうか
子供がとてもはしゃいでる
もう一組の親子は地元の人だろう。
50歳ぐらいの父さんと高校生ぐらいの男の子。
2人は特に何を喋るわけでもなく
沈みゆく霞ケ浦の夕陽を眺めながら魚を待っていた
家の中からお母さんが麦茶とおにぎりを持ってきた。
「ねぇ今日は釣れてるの?」
父さんが答えた
「まぁまぁかな...
  ほれ、あきとありがとうくらい言わんか」
「ありがと...」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声
なんか羨ましかった。
いつでも隣の芝生は青く見えるもの
俺らの日常もこう見えるかな、、
俺、最近父さんと遊んでたっけ
旅から帰ったら父さんと飯でも食いに行こう
そんなことを感じたPM4:00

PM17:30 外はまだ明るい。
俺らは道の駅での休憩を終えて最後の直線を爆走中
(最後の直線といっても100mとかの話じゃない。
                 10kmだ)
少し風が出てきたかな、波が音を立てている
俺らは正直ちょっと焦ってた。
チャリの返却時間と
キャンプ場のチェックイン時間に
間に合うか危うい。
景色なんか知るもんかと無我夢中でチャリを漕いだ
友達が腹が減ったといった。
「俺もうやばいわ、空腹でこれ以上走れない」
「お前充電式のロボットじゃないんだから。
 簡単にへばんなよ。
 向こうの方にかき氷って看板見えるぜ。
 とりま行ってみよ」
かき氷の看板のある家の前に着いた。
友達はうなだれた。俺は言葉を失った
        「閉店」
これまで漢字2字に心を砕かれたことはない
「ちきしょーーーーーー」湖で魚が跳ねた
この時すでにロードバイクよりも
ママチャリの方が早くなっていた

PM7:00 俺らは土浦の町に戻ってきた。
国道に出てすぐ
友達がファミマでチキンと春巻きを買ってきた
正直、死ぬほど羨ましかったね。
ここからゴールまでは10分程。
朝歩いた道を通ってゴールへ向かった。
事件は残り500mのところで起きた。
詳しく説明すると長くなるが俺ならこの事件を
一言でまとめられる。
「点滅中の信号を渡るか渡らないか」
俺は焦るのは嫌だから渡らない
友達は渡った。
それに対して友達が文句を言いだした。
きっと急に揚げ物食べ過ぎて頭が狂ったのだろう
なんてケツの穴の小さい奴。
そんなこんなで俺らはゴールした。
500m手前でケンカしたから
正直心の底からは喜べなかった。後悔1
営業時間はとっくに過ぎていたが
オーナーが快く出迎えてくれた
店の中に入って疲れた俺らに
お茶までごちそうしてくれたのだ。
3人で色んなことを喋ったんだっけ。
めっちゃ疲れてたので内容までは覚えてない
だけど1つだけ覚えてる言葉がある。
「好きなことを仕事にできたら人生楽しいよな」

ママチャリで霞ケ浦湖一周達成
しかし空は祝ってくれるわけでもなく
すっかり暗くなってしまった
PM8:00 俺らはバスに乗って街の中心部に
向かっていた。オーナーありがとな
          

Freedom~ちっぽけな冒険隊Ⅱ~

旅出発当日。朝7時の駅はまだ人も少ない。
連日俺たちを苦しめていた太陽も
まだ顔をだしていないようだ。
昨日の夜に飲んだであろう
缶ビールの空き缶が足元に転がっている
二人で集合し持ち物の確認をしていた。
そこでとんでもないことに気が付いてしまった。
俺は黒のタンクトップに
フリマで100円で買った
アディダスのハーフパンツ。
まるで競輪選手のような格好。
それと比べて友達はどうだろう。
上こそ黒い半袖のものの下はジーンズ。
おいおい俺たち今からママチャリで
100km走りに行くんだぜ(笑)
「なんでハーパン履かないんだよ」
そしたら友達は下を向きながらこう言いやがった
「すね毛が恥ずかしい♡」
もう知らない。。

「んまどうにかなるっしょ」と俺
土浦までの切符を買って電車に乗り込んだ
朝早いということもあり俺らは無事に席に座れた
慣れない電車に揺られながら俺は考えていた
「なんでわざわざ金を払ってまで
ママチャリを漕ぎにいくんだろう」
確かに落ち着いて考えればおかしな話。
いつもの学校生活の中では100円の購買のパンさえ
買うのをためらっているのに、、
今回の旅は移動費レンタル費食費で
なんだかんだ8000円くらいになる
この金があればパン80個買えるんだぜ
これを見てる一般的な若者には
健全な判断をしてほしいね
8000円払って猛暑の中罰ゲームの様な旅をするのと
購買で4か月間毎日パンを買えるってのを
天秤にかけたなら
絶対後者の方を選んだほうがいい。
自分でいうのもなんだが前者を選ぶ奴はもはや変態
頭のネジが10本くらい足りないはずだ

 

電車を3回くらい乗り継いで土浦に着いた。
思ったより大きな駅
駅からレンタルチャリの店までは徒歩20分。
紫外線がだんだん強くなってきたと感じてるのは
俺だけじゃないはず
とはいえやっぱり知らない町を歩くっていうのは
楽しいもんだなにもかもが新鮮に感じる。
聞こえてくる言葉、街の音、
見慣れないスーパーの名前
この感覚は実際に行かないと分からない。
チャリ屋でママチャリを借りた、
店のおっちゃんが言った
「今日はどこまで行くんだい兄ちゃん」
この世の中で一番のにこにこスマイルで
こう答えてやったよ「湖1周してきま~~す」
あの時のおっちゃんの顔を見せてやりたい
「こいつ正気か」って顔で俺を見つめる
あんまりやる人もいないから
アドバイスのしようがないだろうね
なんか俺にいってきたが全部聞き流して出発した

実際出発してみると想像以上に爽快な気分
雲一つもない空、永遠に続く緑のたんぼ、
たまにすれ違うライダーたち
それらすべてが俺らのテンションをぶちあげた。
うろおぼえの歌詞でゆずの夏色を大熱唱。
続いて世界の終わりのRPG
「空は青く澄み渡り、海を目指して歩く、
 怖いものなんてない 
   僕らはもうひとりじゃない」
なんだか今の俺らにぴったりな気がしてきた。
インドア派の象徴ともいえる友達と
臆病だけどいきってる俺が
2人で大きなチャレンジに立ち向かう。
うん、物語としては悪くない

ずっとチャリを漕いでると
今は使われてないであろう古い船着き場に着いた
俺らはここで休憩をとることにした。
スタートして10km。
俺は直射日光で熱くなった、
アスファルトの地面に寝転んだ
目に映る空はとても青く、果てしなく高かった。
波の音が響く船着き場
まるで映画のワンシーン。
きれいな景色の中で寝転ぶイケメン俳優(俺)
きっと大ヒット間違いなしだろう。
バックパックに詰めてきた
2Lのペットボトルを取り出し一気に
500ml飲み干した。とにかく汗の量がすごいのでいくら飲んでも足りない

 

サイクリング再開
さっきの休憩の時に
2人で地図を広げてチェックしたところ
ここから15㎞先のところに
セブンイレブンがあるということが分かった
「次の目標はそこにしようかそこで昼飯を食うぞ」
友達の返事が返ってこなかったのは言うまでもない
まったく可愛げのない奴
朝の集合が早かったため結構お腹が空いている
2人とも休憩前の1.5倍くらいのスピードで
セブンを目指した。
結果的に1時間で到着、
食べ物の誘惑の強さを知ったぜ
俺が買ったのは4つで120円のピザパンと
塩結び、ライチジュース1L全部で400円くらい、
まぁ特にいつもと変わらない昼飯のラインナップ
俺の貧相さがまるわかりだな 笑
だけどなこれだけは言わせてほしい。
こんな飯でも食う環境が違えば
たちまちごちそうに変わるんだ。
猛暑の中でママチャリ20㎞漕いだ後に
食う塩結びは言葉にできないくらいうまかった。
こんなにコメが甘いと思ったことはないよ。
俺はあやうく米に泣かされそうになった。
実際このおにぎりはこれまで食ってきた
どんな肉よりもうまかったな
自信をもって言えるよ
昼飯のおかげで疲れ切ったからだが元気になった
俺らの旅はまだまだ始まったばかりだ

Freedom~ちっぽけな冒険隊Ⅰ~

世の中には面倒くさいことや
非効率なことって山ほどあるよな。
先輩のぱしり、部活で強制参加のマラソン大会、
そしてママチャリ旅
今回の話は去年の夏に実際に俺たちが体験した
過酷でクレイジーで最高に楽しい
ママチャリ旅のお話だ。
この旅が今の俺のスタート地点になった。
俺は思うんだよね。
最近の世の中は色々なものが発展しすぎっしょ
人が来ると勝手に上がる便座
勝手に掃除するロボット
カメラ付き腕時計
便座くらい自分で上げろ、掃除も自分でやれ
腕時計に仕込んでまで撮りたい画像はなんだよ
便利になることは悪いことではない。
時間を効率的に使えるようになるし
余計な労力も使わない。
だけど忘れちゃいけないのは非効率なことほど
楽しかったりするってことだ。
便利なことばかりに流れちゃいけない。
たまにはこうして超非効率な旅を楽しむのも
いいかもしれないぜ?
まぁもう一度やるか?って誘われたら悩むけどな

さてとまずは自己紹介からだな、
俺の名前はかんた。みんなからはKって言われてる。
っていうのも余り誇らしく言えるほどでもないが
YouTubeをやっててそのチャンネルの名前が
「Kの日記」って名前だから
自然とKって呼ばれるようになっちゃったんだよね。
あとで調べてチャンネル登録しといてくれ。
ちょっとだけ宣伝
さて簡単に俺の家族構成でも話しておこうか。
うちは5人家族で子供3人、親2人
お父さんがサラリーマンで
お母さんがパートタイマー。
兄弟は弟と妹が一人ずつ。
そして知能派インテリイケメンの俺だ。
ちなみに長男。
ん?彼女がいるかって?
女性ファンのみんな安心してくれ
俺はいつでもフリー。今笑ったやつぶっ飛ばす
まだ時代は俺に追いついてないだけだからな
世の中では大人たちが好景気、不景気騒いでいる。
新聞読みながら「まだ景気はよくならんなぁ」
って言ってる父を見ると
「おやじがもっと俺にプレゼント買ってくれたら
景気なんかあっという間に良くなるわボケ」
と言いたくなってしまう。(ビビりで言えない)
まぁ俺は高校生だから正直世の中不景気だろうが
生活に変化はないんだけどね
しかしそれは世の中の話。
俺の恋愛不景気はまだ終わりそうにない。。
生まれて17年。景気が上向いたことは
きっと一度もなかったはずだ。
ことごとく狙いは外れ
偶に狙ってもない的が寄ってくる。
先ほども書いたが大事なことなので2回書いておく
  「時代が俺に追いついてないだけだ」

ぽかぽかした平和な春は
あっという間に過ぎてしまった。
ニュースでは美人なアナウンサーが汗びっしょりで
「現在~市では41度を記録しています!」
なんて報道している。
そして言葉とかぶせるように太ったサラリーマンが
ハンカチで噴き出る汗を拭く様子が映される
俺はその映像を見る度いつも思う、
どうせとても暑いってことを伝えたいなら
ビーチで遊ぶ水着のお姉さんでも映してくれって。
いくらテレビとはいえ見栄えを気にするべきだ。
俺の偏見は許してくれ、おやじの影響
さてそんな異常気象の影響は
この宇都宮にも来ていた。
連日35度を超える暑さで通りを歩く人は
とても少なくなっていた。
学校はすっかり夏休み。
そんな時わざわざ宇都宮に来る人なんて少ない
季節をまちがって観光に来た外国人観光客と
東口の飲み屋街で働くメイクが濃いギャル
そしてただやることもなく散歩にきた俺くらいだ。
その日俺は午後から何の予定もたてていなかった。
駅前の商業ビルやアーケードをぶらぶらしながら
次の動画のネタを探していた
俺は今週の週刊誌(内容はエロ本と変わらない)を
チェックするためにいきつけの本屋に入った。
いつもの週刊誌を手に取ろうとしたときだった。
普段は絶対さわりもしないような
カメラマニア向けの雑誌の表紙が目に入った。
日本のどこかの湖で撮影されたであろう
キレイな夕焼けの写真だった。
いつもなら普通にスルー
しかし今日はその写真に見入ってしまった
   「これは行かないといけないっしょ!!
やばいやばい、これは運命だーー!」
なんて知能の悪さがばれてしまうような
独り言をつぶやいて
俺は興奮冷めないまま本屋から出た。
とりあえずどこの湖に行くかを決めなくては。
頭の中の日本地図を引っ張り出してみたが
浮かんできたのは琵琶湖だけだった。
いくらバカな俺でも日本で一番でかい湖が
琵琶湖ということくらいは知っていた。
だけどさすがに琵琶湖は遠い。
行きと帰りの電車代だけで昼飯5か月分。
そこで1つ疑問が浮かんだ
「日本で2番目に大きい湖ってどこなんだ?」
気になってグーグルで調べてみると
茨城県にある霞ケ浦湖ってとこらしい。
一周するのに100Km。
俺は昔から100って数字が好きだった。
みんなに伝わるかな?なんか100ってすごいじゃん。
100歳とか100点とか100万円とか、、
その頃の感覚がまだ消えてなかったらしい。
俺は直感で決めた。
「俺、霞ケ浦湖ママチャリで一周してくるわ」
そうと決まれば準備は早かった。
まず一緒に連れてく友達探し。
3時間で友達と合意した
さすが、バカにはバカが寄ってくるらしい。
まぁ友達の方がまだまともだね、
「ママチャリは勘弁してくれ」
って言ってきたからな
次は宿の用意、
これまで俺は自分で宿なんて探したことなかったから
ホテルの値段にびっくりした!
泊まるだけで4500円!?冗談じゃない。
そんなことしたら1か月間高校の購買で
大好きな揚げパンが買えなくなっちまう。
悩んで悩んで決まった宿泊先はキャンプ場だった。
それもネットにほぼ情報がなくて
やってるかどうかもよく分からん怪しいとこ。
そしてなにより
テントを持っていかなくてはいけないのだ。
「宿代浮かせるためだし仕方ないか、、、」
なんてのんきに言ってる場合じゃなかった。
俺はテントを持ってないのだ。
今振り返ればおかしな話だと思うよ。
速攻でAmazonで一番安いテントを購入。
お値段破格の2200円だ
それもそのはず「完全非防水・ペグなし・1.5人用」
なんかそれっぽく書いてるが要するに
雨が降ったら100%冠水しますよ、
ペグないので大風が吹いたら一発で飛びます、
2人用ではありません。そう書いてあるのだ。
もう知るもんか、どうにでもなっちまえ
さてさて次は食料だ。
出発1日前に2人で隣町のでっかな総合スーパーに向かった。
二人で何を買うべきか考えたがネットで調べても
霞ケ浦湖をママチャリで一周するための装備」
なんて載っていなかった。
スーパーの中をかごを持ってウロチョロしながら
一つずつ必要なものを揃えていった。
まず虫よけスプレー、水、ウエットティッシュ
栄養ゼリー、キャンディーを俺が探してきた
正直これさえあれば余裕で回れちゃうだろう。
そこに友達が帰ってきた。
友達が俺のかごに入れたのは
マシュマロとライターだった。
      「何に使うんだよこれ 笑」
 「キャンプっていったらマシュマロ焼くだろ」
なんて可愛い奴だろう。
いつもは俺に暴言ばかり吐くくせに、、
きっと明日は大雨だ。間違いない
とりあえずこれで会計。
友達の方は中学時代の友達を見つけたらしく
ライターとマシュマロをもって
すぐにレジに行ってしまった。
もう少しで俺の順番ってとこで
買い忘れに気づいた。
旅用のタンクトップが必要だ。
なんでタンクトップかって?
そりゃ日焼けして女の子にモテたいからに決まってる
タンクトップをかごに入れて再度レジに向かった。
会計は思ったよりも安かった。
荷物を持って小さなゲーセンで座ってる友達に合流した。
するとおかしい。この辺りだけなんか臭いのだ。
なにかが焼けた臭い。
「おい、この辺臭くね?」
「あぁ、さっきこのマシュマロ焼いて食ったからだよ」
こいつはアホだ。
スーパーの中でマシュマロ焼きやがった。
さっきの俺の微笑ましい気持ちは踏みにじられた。
三回くらいストレートぶちこんで
四の地固めで絞めてやろうか、、、
俺はあきれて言葉も出なかった
友達は昔の友達とずっと遊んでいたので置いてった
俺と友達の旅前日に最後に交わした言葉は
     

「店の中でマシュマロは焼くなよ、、」
もう死ぬまでこの言葉を使う場面はないだろうね