Freedom~路地裏の幻Ⅰ~

なぁ秘密基地に憧れたことってないかい?
いいや、ないはずがない。
みんな一度はあるはずだ。
それは幼稚園生の時かもしれないし
小学生の時かもしれない
俺にはあった。あれは小学生の時だ

俺たちの下校班は男ばっかりだった
デブとチビとノッポ(これが俺)と
デブとチビ
みんな仲良くて途中で別れるのが
めっちゃ寂しかったんだよね
それでさ、商店街の空き地を見つけて
俺たちの秘密基地にすることにした。
帰宅する前にみんなでそこに集まって
時間を潰すんだ。特に何をするわけでもない
商店の息子が家から袋菓子をパクってきて
みんなに振る舞う。
そしてまた違う商店の息子が
家の倉庫からジュースをパクってくる。
そいつはビビりで1個しか盗んでこなかった
下校班は5人。もちろん争奪戦だ
だけど結局はみんなで回し飲み
250mlの小さな缶ジュース
それを囲みながら
好きな女の子の話をしたり
覚えたてのエロい単語を叫んだり。
傍から見たら変な奴らだが
俺らは本当に楽しかった
寄り道を禁止されてる小学生には
帰り道に食べるポテチと
回し飲みの炭酸飲料は
すごいご馳走だったんだ。
だけどこの秘密基地の話が
周りに広がりすぎて
学校にバレた。
それはそれは叱られた。
だけどそんな悪い思い出こそ
こうやって記憶に残ってるもんだよな

今回はそんな秘密基地に関するお話だ
なにも秘密基地に憧れるのは
幼稚園生や小学生だけではない
俺ら高校生だってそんな場所が欲しいんだ
学校とバイトと家の往復の毎日
そんな俺らにも少し休憩する
場所があればいいななんて思ってる
今回の俺の立場は当事者でもあり
傍観者でもある。
だからこの記事を書くのは最初は
気が進まなかった。
だけど今回の路地裏の幻を幻で
終わらせないために俺はここに
書き殴ろうと思ってる。
いつかまた誰かが
この未完のプロジェクトを
完成させてくれることを信じてね
では本題に入ろうか。

夏休みも終わろうとしている8月24日
俺は駅前のマクドナルドにいた
今年の夏休みは
広島に災害ボランティア行って
(このことはまた別の回で話すよ)
青森のばあちゃんに会いに行って
ママチャリで東京まで旅して
盛りだくさんの長期休暇だった。
遡ること1週間前。
バイトが終わり自分の部屋で
扇風機とお見合いしていたら
俺のスマホに通知が入った。
TwitterのDMだ。
確認してみると見たことない人だった
どうやら県内の高校の3年生らしい
相手は俺のことを知っていた。
いくつかメッセージを交換すると
話の筋が見えてきた

この先輩は俺が前に少しお世話になった
Start upカフェという勉強スペースの
スタッフになったらしい。
そこでオーナーから俺の話を聞いた
そして話がしてみたいと思い
DMを送り俺をマクドナルドに誘った

こんな感じだ。相手の文面を見ても
とても誠実な人っぽいオーラーが
伝わってくる。俺としても
きっとどこかでこの人と交わりそうだから
日にちを指定して会う約束をした。
そして今に至る。
俺はレジでマックシェイクを注文して
その先輩が待つ席に向かった。
14時だというのに店内は満員
100円のジュースを注文して
居座り続ける学生たち。
財布の懐が寂しいのは
どこの高校生も同じらしい
そんな中、
顔も知らない先輩を探すのは
とても困難だった。
キンキンに冷えたマックシェイクを
片手に店内をキョロキョロ。
すると先輩自ら声をかけてきた。

「君がK君か、会いたかったよ」
俺は普段、会っただけで
こんなに喜ばれることはないので
少しビビった。なんて反応しようか
脳みそフル回転させる。
とっさに出てきた言葉は
「あ、、ああありがとうございましゅ」
なんて頼りない脳みそなんだろうか。。
そこからお互いのことについて
語り合った。こうた(仮名)は元柔道部
夏に引退し今は新しいことを
始めようと自分で動き始めたらしい
その時丁度start upカフェを見つけた
DMでスタッフとして働きたいと
メッセージを送り採用になった
翌週から毎日4時間カフェの
受付に座り運営している。
こうたはカフェをもっと大きくしたいと
話していた。実際この時1日の
平均利用者数は3人。
勉強スペースを提供しているだけなので
収入は生まれない。
それでも場所代と光熱費などが
それなりにかかるので赤字だ。
この状況を打開するためには
まず利用者を増やさなくてはならない。
そこから二人で解決策を話し合い
とりあえず今日は
ここで別れることにした。
俺は携帯の画面を見て
真っ先に駅に走り電車に飛び乗った
夕方からバイトがあるのを忘れていた
こうたはカフェの開店準備が
あるらしく、そそくさとカフェに
戻っていった。

 


1日の平均利用者3人。
駅から徒歩10分
入り組んだ住宅地にあるビルの3階
看板はなく、夜は暗い。
オーナーは常に顔を出さない。
そんな絶望的な環境にあるカフェを
舞台に今回の物語が幕を開ける
客を集める難しさと
見せつけられる理想と現実の差
だけど俺たちはこの小さなカフェを
人と人が出会える場所にしようと思い
SNSでの発信を始めた。
この日から1か月後
このカフェで奇跡が起こる。

次回の更新をお楽しみに!