Freedom~氷点下の宴Ⅱ~

AM8:00
俺らは近くのスーパーで貰った段ボールを
加工した手書きの看板をリュックサックに
引っ掛けて4号線を歩いていた。
出発から1時間。特にトラブルもなく歩いてきた
(途中たくまが抜け駆けして
 パン屋さんにパンを買いに行ったことを除けば)
スタート那須町のお隣、那須塩原市に入ったときのこと
俺はポケットに入れたはずの手袋を
着けようとした。(なぜ着用していなかったのか)
右ポケットに手を突っ込む。 ない
左ポケットも探す  ない
リュックを探す  ない
慌ててパンツに手を突っ込む 温かい(関係ない)
3回も探してみたがあるはず手袋がないのだ
たくまを問い詰める。冗談でもいいから
俺が盗んだとか言ってほしかった
「うん、俺も持ってないし知らない」
俺は確信した。手袋を落とした
きっと今日の夕方はかなり冷え込むだろう
今でさえも超冷たい
探しに帰ろうか悩んだが
たくまを連れて雪道を戻るのは
さすがに申し訳なく感じた。
さよなら手袋。結構気に入ってたんだけどな

AM10:30
ど田舎を歩き抜き心身ともに疲労
溜まっていた。臭いもなかなかきつい
そんな俺らの前に西那須野の街が広がってきた
ファーストフード店にゲーセン、スーパーマーケット
大型家具店にカラオケまで。
まぁ無一文の俺はハンバーガーさえも食べられない
ゲーセンから出てきたアホそうな中学生が
こっちを見て笑ってた。
あんまり好きじゃない顔だったから無視
少し歩いたところにスーパーがあったので
そこの休憩所で無料のお茶をがぶ飲み
そして非常食に持ってきたふりかけを
そのまま口に流し込む。
一度やってみたかったんだよね。
美味すぎる、これさえあれば何もいらない

旅再開
2人で並んで狭い歩道を歩いていると
後ろから佐川急便のトラックが停まった
気にもせず歩き続けた
すると後ろからお兄さんが走ってきて
俺らに話しかけてきた。
「なぁ兄ちゃん、無一文なのか?
 俺こういう旅人見てると
 応援したくなっちゃうんだよ
 これは俺からの小遣いだ
 なんかうまいもん食いな」
ぽかーーーん、、、、、、、
え?この人何言ってるの?
なんで俺らお金貰ってるの?
もちろん返そうとした。すると、
「いいんだいいんだ俺のお節介だから
 楽しんで来いよ」と言い
ラクションを鳴らしていってしまった
ぽかーーーん(今日2回目)
くそ、もう訳わかんねぇ
なんでこんな優しい人いんだよ
旅してるとこんな訳わかんないことばっかり
1人1000円2人で2000円。
こうなったら美味いもん食べてやろうぜ

PM14:00
さすがにたくまに疲れが見えてきた
そりゃそうだ。あいつはコートにブーツ
100㎞歩くような格好ではない。
間違いなく靴擦れするだろ。
大田原市に入るとたくまの歩くスピードが
一段と落ちた。コンビニで少しずつ休憩を
入れながら進む。そんな時だった。
那須町から3つ目の街、矢板市に入ると同時に
俺らの前方に青い車が停まった。
中からおっちゃんが出てきて俺らを呼んでいる
「乗ってきなよ、俺も進行方向同じだからさ」
その言葉を聞いたたくまの顔が変わった
さっきまで俺の遥か後ろを歩いてたくせに
全力ダッシュ(それでも遅い)で俺を抜きさり
一目散に車に走っていった。
どこにこんな元気が残ってたんだよ、、、
本当はヒッチ禁止だけど
勝手に停まってくれたんだからしょうがない
矢板市の中心部まで5㎞程乗せてもらった。
これを読んでる君なら車で進む5㎞なんて
あっという間だってことが分かるだろ?
だけどなずっと歩いてきた俺たちにとって
5㎞乗せてもらえるって超大きいことなんだよ
たかが5㎞でも歩いたら1時間。
1時間巻けるのはとても大きい
ほんとにあっという間だったけど
このおっちゃんに助けてもらったことは
きっとこの先忘れることはないね
みんな勘違いしないでくれよ
これはヒッチハイクではない
勝手に停まってくれただけだから 笑